第2次中期計画(平成27~29年度)

「公共建築の長寿命化、有効活用及び保全・施設管理の情報化の促進」

 一般財団法人建築保全センター(以下「本センター」という。)は、「国、地方公共団体等の建築物等の保全に関する総合的な調査研究及び技術開発を行うことにより、地球環境の保護と官公庁施設等のストックの有効活用等の社会的要請に対応した建築物等の適正な保全の方法を確立し、その成果を広く国民に普及し、もって国民生活環境の向上並びに国家経済の発展に寄与すること」を設立目的としている。

 国と地方公共団体の所有する公共建築の延べ面積は各々約5千万㎡、約6億7千万㎡ 注1)で合計が約7億2千万㎡である。地方公共団体の公共建築の約半数は、完成から30年を超え 注2)、大規模修繕等の必要性が増大している。さらに厳しい財政状況、人口減少、少子高齢化、市町村合併、国土強靭化、改正省エネ法等により、公共建築は長寿命化、資産のスリム化、耐震化、安全・安心、省エネ化等の性能の向上と施設のより有効な活用が求められている。こうした中、平成25年11月には関係省庁連絡会議において「インフラ長寿命化基本計画」が策定され、平成26年4月には総務省から地方公共団体に対して、公共建築を含む公共施設の総合的かつ計画的な管理を推進するため、「公共施設等総合管理計画」の策定が要請された。

 本センターが平成20年度から毎年実施している自治体ストック調査により、施設台帳、長期修繕計画、建て替え等の施設管理を総括的に推進する体制づくりは着実に進んでいるものの、「公共施設等総合管理計画」の策定はまだ緒に就いたばかりであること 注3)、地方公共団体の公共建築の保全費は、団体間においても、また学校等同一用途の施設においてもばらつきが大きいことが明らかになっており 注4)、これら現状と改善策を公共施設等総合管理計画に反映することが必要である。

 一方では公共建築の長寿命化への要求に伴い、診断、修繕、改修、リノベーション、コンバージョン技術の向上等のハード領域の調査研究を深める必要がある。さらにBIMMS(保全マネジメントシステム)、BIM(建築情報モデリング)、各種センサー、タブレット端末等のICT先進技術による効率化、遠隔監視・診断、劣化予測の実用化などの、保全・施設管理の情報化の促進も喫緊の課題である。

 以上のように幅広い分野にわたる調査研究と技術開発に速やかに取り組み、その成果をあげて、広く社会に普及する必要がある。このため「公共建築の長寿命化、有効活用及び保全・施設管理の情報化の促進」をテーマとした第2次中期計画(平成27~29年度)を定め、目標達成に向けて幅広い取組を重点的、計画的に行うこととする。

1.調査研究、技術開発に関する重点的な取組

調査研究、技術開発に関しては次の3点に重点的に取り組む。詳細を別表1に示す。

(1) 公共建築の長寿命化、改修等のハード領域に関する調査研究、技術開発
(2) 公共建築の施設再編、運用改善等のソフト領域に関する調査研究、技術開発
(3) 公共建築の保全・施設管理のハード・ソフト領域の両面を支える情報化及びデータ整備に関する調査研究、技術開発

2.業務運営に関する重点的な取組

調査研究、技術開発を支える業務運営に関して、顧客、業務プロセス、人材・組織の視点から次の3点に重点的に取り組み、改善を図る。詳細を別表2に示す。

(1) 顧客の視点の強化
(2) 災害、情報保全に関するリスクマネジメント強化
(3) 組織基盤等の強化・拡充、人材のネットワーク化

注1:「国家機関の建築物等の保全の現況」(平成26年3月、国土交通省大臣官房官庁営繕部)によれば、平成25年7月現在で全ての官庁施設の総延べ面積は約4,876万㎡としている。また、公共施設状況調(平成24年度、総務省)によれば、地方公共団体の公有財産は、都道府県と市町村の合計で約6億7,086万㎡であり、国との合計で約7億2千万㎡となる。

注2:「官庁営繕部政策レビューの概要」(第34回国土交通省政策評価会(平成26年9月30日)資料2-2-③)によれば、国家機関の建築物は築30年以上の割合が36.0%、都道府県では同割合が46.2%、政令市では同割合が47.0%としている。また、本センターのBIMMSに平成26年3月31日時点で登録されている地方公共団体の建築物(登録量は3,790万㎡)を分析した結果では、経年30年以上の割合は床面積比で50%である。これらの結果から地方公共団体の公共建築は、その約半数が完成から30年を超えているものと推定した。

注3:「公共建築のマネジメントの状況に関する調査(2014)」の概要報告[Re185号]

注4:「建築ストック時代の公共建築の現況と課題に関する調査(2010)」の概要報告(その1)(その2)[Re169号]
「建築ストック時代の公共建築の現況と課題に関する調査(2011)」の概要報告(その1)(その2)[Re173号]

別表1-調査研究・技術開発に関する重点的な取組と目標とする研究等成果

重点的な取組目標とする研究等成果3箇年の予算
合計(予定)
重点1:
公共建築の長寿命化、改修等のハード領域に関する調査研究、技術開発
・建築改修工事標準仕様書、建築改修工事監理指針、保全業務共通仕様書等の現行基準類に関する調査研究
・木造建築の改修・保全業務仕様に関する調査研究
・評価・格付け、ベンチマーキング結果を改善する改修手法等に関する調査研究
92百万円
重点2:
公共建築の施設再編、運用改善等のソフト領域に関する調査研究、技術開発
・公共施設等総合管理計画・資産のスリム化等に関する調査研究
・評価・格付け、ベンチマーキング等の調査研究
106百万円
重点3:
公共建築の保全・施設管理のハード・ソフト領域の両面を支える情報化及びデータ整備に関する調査研究、技術開発
・ライフサイクルコストの見直し
・自治体ストック調査の継続的実施
・BIMMSの活用、機能向上・拡張に関する調査研究
・保全、施設管理におけるICT化、新技術導入
66百万円

別表2-業務運営に関する重点的な取組と改善目標

重点的な取組改 善 目 標
重点4:
顧客の視点の強化
・ホームページ、ネットワークニュース、機関誌の連携強化
・研究成果の効果的な公表
・建築仕上げリフォーム技術研修の改善、充実
重点5:
災害、情報保全に関する リスクマネジメント強化
・災害等のリスクに対するBCP、BCMの確立
・情報セキュリティ、個人情報保護の徹底
重点6:
組織基盤等の強化・拡充、人材のネットワーク化
・総合管理計画作成、西日本での業務増加に対する組織拡充
・業務量変動に対応する人材のネットワーク化

第1次中期計画(平成24~26年度)