技術概要
既存建築物の立て管、あるいは埋設された排水管(建物から第一枡まで)の錆及び付着物を除去した後に、エポキシ樹脂を含浸した特殊繊維クロス(以下タフネスクロス)の複合体を既存排水管内側に反転させながら密着させ、既存排水管内に新しく樹脂管を形成し、防錆と補強を行うもので、立て管、横引き主管ならびに枝管合流部を主な対象として更生を図る技術。
諸元性能
1)適用管種 | 配管用炭素鋼鋼管(白)(以下 SGPと称す) 排水用鋳鉄管(以下 CIPと称す) 硬質ポリ塩化ビニル管(以下 VP,VUと称す) |
2)適用管経 | 50A ~200A |
3)適用除外範囲 | (1)立て管に横枝管が合流する場合の除外条件 ①立て管において、その施工範囲内にエルボが存在する管 立て管に各階の横枝管が合流する箇所はタフネスクロスで閉塞されるため、開口(削孔)及びその後のライニング処理を行う。この工程作業には専用の特殊治具を管内に挿入しなければならないが、治具はエルボを通過できないため、対象区間は直管であることが条件となる。よって、施工範囲内にエルボが存在する管は適用除外とする。 (2)立て管に横枝管の合流がない場合の適用除外条件 ①30m以上の配管 1系統当たりの最大施工長さを30mとするため、30m以上の対象配管の途中階において管の切断が不可能な場合は施工対象外とする。なお、以下の理由により30m以内に限定する。 ・多量のライニング剤を調合した場合、熱硬化性であるエポキシ樹脂の特性により発熱量が増大し、可使時間が短く、また硬化が早まり作業に支障をきたす。 ・管内挿入中のタフネスクロスに不具合が発生し、引き抜き撤去が必要とした場合の引き抜き可能な最大長さとして設定した。 ・インナーチューブにタフネスクロスを挿入する際の、良好な作業性であることとした。 ②管切断が不可能な場合 施工に際しては、タフネスクロスの発進側(挿入側)と吐出側(出口側)となる部分の配管断面が露出し、各々にガイドホースを接続できることが条件となる。 従って施工区間の上下両端部において、管の切断が不可能な場合は施工対象外とする。 なお、パイプシャフト等、隠蔽部に配管されている場合は、壁面の開口等、建築工事を伴うこともあり、建物所有者の同意を得なければならない。 ③施工区間内における90度エルボが5箇所以上存在する場合 タフネスクロスの先端がエルボ壁面に突き当たった後に、先端手前の側面が管の延長方向に進行するが、エルボ内回り部においてはタフネスクロスのしわが発生する。 このため、エルボを通過したタフネスクロスの先端は、管の中心を移動せず、平均的に管内面に付着しない場合がある。 従って、施工の条件として、施工区間内の90度エルボの数を4個以内とするために、管の切断により工区を分離する。 (3)横枝管の合流の有無が無関係の共通条件 ①管内の突起物の存在 タフネスクロスの反転挿入は、コンプレッサーによる圧縮空気を利用し、インナーチューブを管内で加圧することにより、タフネスクロスを対象管内面に密着させることとするため、管内面に突起物が存在する場合、インナーチューブを破損させ漏気発生によりタフネスクロスが管内面に密着しない。また、突起物はタフネスクロスの先端中央が管の中心部を移動することを妨げ、管内面に一様に密着しない状態が発生する。通常、高圧洗浄、タービン洗浄等にて対処できない突起物として、溶接配管における突合せ部分の突起がある。 ②特殊排水継手が使用されている場合 ソベント、セクスチャー、集合管等、特殊排水継手が使用されている場合があり、①その内部には排水の整流を目的としたフィンが突起物として存在する。②各継手の流れ方向における断面の大きさや形状が前後の配管と著しく異なる。③異形である。これらが要因となりタフネスクロスが管内壁に密着しないこと、また硬化しても枝管合流部の処理が不可能なことから、適用不可とする。 ③管断面にズレが生じている脱管状態の場合 タフネスクロスの先端部分における管の軸方向への進行が困難であること。及び、タフネスクロスがズレの箇所を通過しても、当該箇所の断面積が減少し、排水機能が低下する可能性がある。 ④管の軸方向に1cm以上のズレがある脱管状態の場合 腐食等により管が軸方向に1cm以上脱落、脱管がある場合は適用不可とする。タフネスクロスの硬化前の加圧中において、脱管部分では過剰に膨らみ、硬化した場合所定の厚さに達しないため、漏水の原因となる可能性がある。また、加圧するためクロス、チューブが破損し、 漏気によりFRPが形成しない事がある。 |
4)施工実施地域 | 日本国内全域(一部離島除く) |
工程
本工法は、次の主な工程により施工する。
1)事前調査 | 施工範囲に基づき調査を事前に行ない、施工計画を立案する。 |
2)準備作業 | 現場仮設、設営、作業場所となる壁の開口、管の切断を行う。 |
3)洗浄、研磨 | 高圧洗浄機により管内面の錆・付着物を除去し、管断面の十分な回復を図った後、タービンカッターにより研磨を行ない、管内面を平滑にする。 |
4)ライニング | ライニング剤(P・C・Gコート マルチHS或はマルチHW)を含浸させたタフネスクロスを管内面に密着させ、自立管を形成させるもので、反転機(マルチライナー)に装填したタフネスクロスを圧縮空気で加圧させながら管内に反転挿入し、既設管内に新しく樹脂管を形成する。 |
5)復旧、検査 | 管切断部、壁開口部の復旧、完成検査後引き渡しをする。 |